更新日: 2025年06月10日
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【専門家監修】医療機器とは?定義から種類まで分かりやすく解説

医療機器とは?定義から種類まで分かりやすく解説

目次

この記事の監修者

居原 範道

医療機器QMSコンサルタント

居原 範道

私たちの身の回りには、実は多くの医療機器が存在しています。体温計や血圧計といった身近なものから、病院で使用されるMRIやCTスキャンまで、その範囲は非常に幅広いものです。

しかし、「医療機器」と聞いて、その正確な定義や分類を説明できる方は少ないのではないでしょうか。実はコンタクトレンズや絆創膏も医療機器に分類されることをご存知でしたか?

本記事では、医療機器の法的な定義から身近な具体例、分類方法まで、分かりやすく解説していきます。日常生活や仕事で医療機器と関わる機会がある方、医療機器業界に興味をお持ちの方にとって、基礎知識として役立つ内容となっています。

医療機器とは?薬機法による正式な定義

医療機器について理解するためには、まず法律上の定義を知ることが重要です。日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(通称:薬機法)により、医療機器が明確に定義されています。

薬機法第2条第4項の定義内容

薬機法第2条第4項では、医療機器を以下のように定義しています。

人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であって、政令で定めるもの

この定義を分かりやすく解説すると、医療機器とは以下の3つの目的のいずれかを持つ機械器具等を指します。

  1. 疾病の診断に使用される(例:血圧計、体温計、心電計)
  2. 疾病の治療・予防に使用される(例:人工呼吸器、ペースメーカー、注射器)
  3. 身体の構造・機能に影響を及ぼす(例:コンタクトレンズ、補聴器、義肢)

重要なポイントは、これらの目的で使用される機器であっても、すべてが医療機器に該当するわけではなく、「政令で定めるもの」に限定される点です。つまり、国が指定したものだけが正式な医療機器として扱われます。 

医療機器に該当しないものの例

医療機器の定義を理解する上で、「医療機器に該当しないもの」を知ることも重要です。以下は、一見医療機器のように思えても、実際には医療機器に分類されない製品の例です。

マスク(サージカルマスクを除く) 一般的な不織布マスクや布マスクは、花粉やほこりを防ぐ目的で使用されますが、医療機器には該当しません。ただし、手術時に使用されるサージカルマスクは医療機器として分類されます。

トレーニング機器 ランニングマシンやダンベルなどのフィットネス機器は、健康増進や体力向上を目的としており、医療機器には該当しません。

アロマディフューザー リラクゼーション効果を謳うアロマ機器も、医療機器ではありません。ただし、医療目的で使用される吸入器は医療機器に分類されます。

これらの製品と医療機器の境界線は、「医療目的での使用」と「薬機法による指定」の有無にあります。

身近にある医療機器の具体例

医療機器と聞くと、病院にある大型の機械を想像しがちですが、実は私たちの日常生活にも多くの医療機器が存在しています。ここでは、身近な医療機器を場面別に紹介していきます。

家庭で使用する医療機器

多くの家庭で使用されている医療機器には、以下のようなものがあります。

体温計 最も身近な医療機器の一つです。水銀体温計から電子体温計、非接触型体温計まで、すべて医療機器として分類されています。体温という重要なバイタルサインを測定し、疾病の診断に役立つためです。

血圧計 高血圧の管理に欠かせない血圧計も医療機器です。手首式、上腕式を問わず、家庭用血圧計は管理医療機器(クラス2)に分類されています。

パルスオキシメーター 新型コロナウイルス感染症の流行により一般家庭でも普及したパルスオキシメーターは、血中酸素飽和度を測定する医療機器です。

家庭用電気マッサージ器 意外に思われるかもしれませんが、電動マッサージチェアや低周波治療器なども医療機器です。筋肉のこりをほぐし、血行を促進する効果が認められているためです。

血糖測定器 糖尿病患者が自己管理で使用する血糖測定器と測定用チップも、重要な家庭用医療機器です。

病院・診療所で使用される医療機器

医療現場では、より専門的で高度な医療機器が使用されています。

画像診断装置

  • MRI(磁気共鳴画像診断装置):強力な磁場を使用して体内の詳細な画像を撮影
  • CTスキャン(コンピュータ断層撮影装置):X線を使用して断層画像を撮影
  • 超音波診断装置(エコー):超音波を使用して臓器や胎児の状態を観察
  • X線撮影装置:骨折や肺炎などの診断に使用

生命維持管理装置

  • 人工呼吸器:呼吸機能を補助・代替する装置
  • 人工心肺装置:心臓手術時に心臓と肺の機能を代行
  • 人工透析装置:腎臓の機能を代替

手術用機器

  • 電気メス:高周波電流を使用して組織を切開・凝固
  • 内視鏡:体内を観察・処置するための機器
  • 手術用顕微鏡:微細な手術を行うための拡大装置

意外な医療機器(コンタクトレンズ・補聴器など)

日常的に使用しているものの中にも、医療機器として分類されているものが多数あります。

コンタクトレンズ 視力矯正用のコンタクトレンズは、高度管理医療機器(クラス3)に分類されています。目に直接装着し、視力という身体機能に影響を与えるためです。カラーコンタクトレンズ(度なし)も同様に医療機器です。

補聴器 聴力を補助する補聴器は、管理医療機器(クラス2)として分類されています。個人の聴力に合わせた調整が必要な精密機器です。

絆創膏(ばんそうこう) 一般的な絆創膏も医療機器です。傷口を保護し、治癒を促進する目的で使用されるため、一般医療機器(クラス1)に分類されています。

歯科用製品

  • 入れ歯、差し歯
  • 歯科用接着剤
  • 歯列矯正用器具

その他の意外な医療機器

  • メガネのレンズ(視力矯正用)
  • 車椅子(手動・電動)
  • 松葉杖
  • ギプス材料
  • 医療用サポーター

これらの製品が医療機器として規制される理由は、使用方法を誤ると健康被害を引き起こす可能性があるためです。そのため、製造・販売には適切な許可や届出が必要となります。 

医療機器のクラス分類システム

医療機器は、人体へのリスクの程度に応じて4つのクラスに分類されています。この分類システムは、適切な規制と管理を行うための重要な仕組みです。リスクが低いものから順に、クラス1からクラス4まで設定されています。

クラス1(一般医療機器)の特徴と例

リスクレベル:極めて低い

クラス1の一般医療機器は、不具合が生じても人体へのリスクが極めて低いと考えられる医療機器です。製造販売には届出のみが必要で、承認や認証は不要です。

主な特徴

  • 副作用や機能障害のリスクがほとんどない
  • 製造販売届出のみで市場に出せる
  • 販売に特別な許可は不要(一部例外あり)

具体例

  • 絆創膏、ガーゼ、脱脂綿
  • 医療用はさみ、ピンセット
  • 手術用手袋(非天然ゴム製)
  • 聴診器
  • 打診器
  • 舌圧子
  • X線フィルム

クラス2(管理医療機器)の特徴と例

リスクレベル:比較的低い

クラス2の管理医療機器は、不具合が生じた場合でも人体へのリスクが比較的低いと考えられる医療機器です。多くの場合、第三者認証機関の認証が必要です。

主な特徴

  • 適正な使用において副作用のリスクは低い
  • 認証基準があるものは第三者認証、ないものは厚生労働大臣の承認が必要
  • 販売には管理医療機器販売業の届出が必要

具体例

  • 電子体温計、電子血圧計
  • 家庭用電気マッサージ器
  • 補聴器
  • 家庭用低周波治療器
  • 磁気治療器
  • 超音波診断装置
  • 心電計
  • 内視鏡(一部)
  • 手術用手袋(天然ゴム製)

クラス3・4(高度管理医療機器)の特徴と例

クラス3 - リスクレベル:比較的高い

不具合が生じた場合、人体へのリスクが比較的高いと考えられる医療機器です。

クラス3の具体例

  • コンタクトレンズ(ソフト・ハード)
  • 人工透析器
  • 人工骨、人工関節
  • 放射線治療装置
  • 血管用ステント
  • 吸収性縫合糸
  • 人工呼吸器(一部)
  • MRI装置
  • CTスキャン装置

クラス4 - リスクレベル:高い

患者への侵襲性が高く、不具合が生じた場合、生命の危険に直結する恐れがある医療機器です。

クラス4の具体例

  • ペースメーカー
  • 人工心臓弁
  • ステントグラフト
  • 人工血管
  • 中心静脈カテーテル
  • 人工心肺装置

高度管理医療機器の共通特徴

  • 厚生労働大臣の承認が必要(一部認証基準があるものは第三者認証機関の認証)
  • 販売には高度管理医療機器販売業の許可が必要
  • 使用には専門的な知識・技術が求められることが多い
  • 定期的な保守点検が義務付けられているものもある

このクラス分類は、医療機器の適切な品質管理と安全性確保のための重要な指標となっています。クラスが上がるほど、製造・販売・使用における規制が厳しくなり、より慎重な取り扱いが求められます。

医療機器の6つの類別と4,000以上の一般的名称

医療機器は、クラス分類とは別に、その種類や用途によって6つの類別に分けられています。さらに、各類別の中で4,000以上の「一般的名称」が定められており、非常に細かく分類されています。

機械器具・医療用品・歯科材料

機械器具(類別コード:01〜85)

最も種類が多い類別で、診断・治療・処置に使用される様々な機械や器具が含まれます。

主な分類例:

  • 手術台及び治療台(01)
  • 医科用鋼製器具(12):メス、鉗子、はさみなど
  • 注射器具及び穿刺器具(13):注射器、注射針など
  • 医科用X線装置(37):レントゲン装置など
  • 放射性物質診療用器具(40):PET装置など
  • 理学診療用器具(58):低周波治療器など
  • 歯科用機械器具(66〜72):歯科用ドリル、歯科用チェアなど

医療用品(類別コード:86〜94)

主に消耗品や使い捨て製品が分類されています。

主な分類例:

  • 医療用縫合糸(86):吸収性・非吸収性縫合糸
  • 整形用品(87):ギプス材料、包帯など
  • 医療用エックス線フィルム(89)
  • 副木(90)
  • 医療用殺菌水装置(91)

歯科材料(類別コード:95〜99)

歯科治療に特化した材料類です。

主な分類例:

  • 歯科用充填材料(95):アマルガム、レジンなど
  • 歯冠材料(96):金属冠、セラミック冠など
  • 義歯床材料(97)
  • 歯科用接着充填材料(98)
  • 歯科用インプラント材料(99)

衛生用品・プログラム・動物専用医療機器

衛生用品(類別コード:100〜109)

日常的な衛生管理に使用される製品が中心です。

主な分類例:

  • 医療脱脂綿(100)
  • 医療ガーゼ(101)
  • 医療用絆創膏(102)
  • 月経処理用品(103):医療用タンポンなど
  • 避妊用具(104):コンドームなど

プログラム(類別コード:110〜)

医療機器プログラムとして、ソフトウェア単体でも医療機器として扱われるようになりました。

主な分類例:

  • 診断支援プログラム
  • 治療計画支援プログラム
  • 画像診断装置ワークステーション用プログラム

動物専用医療機器

人体用医療機器とは別に、動物専用として開発・承認された医療機器です。基本的な分類は人体用と同様ですが、動物の生理機能に合わせた設計となっています。

一般的名称の重要性

4,000以上ある一般的名称は、医療機器を正確に識別するための重要な要素です。例えば「血圧計」という大きなカテゴリの中にも、以下のような細かい一般的名称があります:

  • 医用電子血圧計
  • 非観血血圧モニタ
  • 観血血圧モニタ
  • 手動式電子血圧計
  • 自動電子血圧計

これらの詳細な分類により、各医療機器の特性や用途が明確になり、適切な規制や管理が可能となっています。

医療機器と健康器具の違い

医療機器と健康器具は、一見似たような製品でも法的な位置づけが大きく異なります。この違いを理解することは、製品を選択・使用する上で、また事業として取り扱う上でも重要です。

規制対象となる医療機器の条件

医療機器として規制対象となるためには、以下の条件を満たす必要があります。

1. 医療目的での使用 疾病の診断、治療、予防のいずれかを目的としていることが必要です。単なる健康増進や美容目的では医療機器に該当しません。

2. 薬機法での指定 医療目的があっても、薬機法で指定されていなければ医療機器ではありません。新しい技術や製品は、適切な手続きを経て医療機器として指定される必要があります。

3. 標榜可能な効能効果 医療機器は、承認・認証・届出により認められた効能効果のみを標榜できます。例えば、家庭用電気マッサージ器であれば「あんま、マッサージの代用」「血行の促進」「筋肉の疲れをとる」「筋肉のこりをほぐす」などが認められています。

4. 品質・安全性の基準 医療機器は、JIS規格やISO規格などの品質基準を満たす必要があります。また、定期的な保守点検が義務付けられているものもあります。 

健康器具・フィットネス機器との境界線

健康器具やフィットネス機器は、医療機器とは異なる扱いを受けます。以下、具体的な違いを見ていきましょう。

健康器具の特徴

  • 健康の維持・増進が主目的
  • 医療効果を標榜できない
  • 薬機法の規制対象外
  • 販売に特別な許可は不要 

境界線の具体例

  1. マッサージ関連機器
    • 医療機器:電動マッサージチェア(血行促進効果を標榜)
    • 健康器具:手動マッサージローラー(リラクゼーション目的)
  2. 運動関連機器
    • 医療機器:リハビリ用歩行器(医療目的)
    • 健康器具:ウォーキングマシン(運動目的)
  3. 温熱機器
    • 医療機器:家庭用温熱治療器(血行促進、疲労回復を標榜)
    • 健康器具:電気毛布(単なる暖房器具)
  4. 測定機器
    • 医療機器:体組成計(医療データとして使用可能なもの)
    • 健康器具:活動量計(日常の運動量記録のみ)

グレーゾーンの製品

医療機器と健康器具の境界線上にある製品も存在します:

  • 磁気アクセサリー:装身具として販売される場合は健康器具、血行促進効果を標榜すれば医療機器
  • サポーター類:単なる保護・固定目的なら健康器具、治療効果を標榜すれば医療機器
  • 美容機器:美容目的のみなら健康器具、しわ改善などの効果を標榜すれば医療機器の可能性

注意すべきポイント

  1. 健康器具が医療効果を謳うことは薬機法違反となります
  2. 海外製品でも日本で販売する場合は日本の規制に従う必要があります
  3. インターネット販売でも同様の規制が適用されます
  4. 「個人の感想」として医療効果を示唆することも違法となる場合があります

消費者としては、製品に「医療機器」の表示があるかを確認し、適切に承認・認証された製品を選ぶことが重要です。 

医療機器の製造・販売に関する規制

医療機器を製造・販売するには、薬機法に基づく様々な規制をクリアする必要があります。これらの規制は、医療機器の品質・有効性・安全性を確保し、国民の健康を守るために設けられています。

承認・認証・届出の違い

医療機器を市場に出すためには、そのリスクレベルに応じて「承認」「認証」「届出」のいずれかの手続きが必要です。

承認(主にクラス3・4、一部のクラス2)

最も厳格な審査プロセスです。

  • 申請先:厚生労働大臣(実務はPMDA:独立法人 医薬品医療機器総合機構)
  • 対象:新医療機器、高リスク医療機器
  • 審査内容:品質、有効性、安全性の詳細な評価
  • 審査期間:通常1年以上
  • 必要書類:臨床試験データ、製造方法、品質管理など膨大な資料
  • 費用:数百万円〜数千万円

認証(認証基準のあるクラス2・一部のクラス3)

民間の第三者認証機関による審査です。

  • 申請先:登録認証機関(13機関)
  • 対象:認証基準が定められている管理医療機器等
  • 審査内容:認証基準への適合性確認
  • 審査期間:通常2〜6か月
  • 必要書類:技術資料、品質管理システムの資料など
  • 費用:数十万円〜数百万円

届出(クラス1)

最も簡易な手続きです。

  • 提出先:PMDA
  • 対象:一般医療機器
  • 内容:製品情報の届出のみ(審査なし)
  • 期間:即日〜数日
  • 必要書類:製造販売届書、添付資料
  • 費用:手数料なし(書類作成費用のみ)

手続き選択のフローチャート

  1. クラス分類の確認 → クラス1なら届出
  2. 認証基準の有無確認 → あれば認証、なければ承認
  3. 新規性の確認 → 新医療機器は必ず承認 

医療機器販売業の許可について

医療機器を販売・授与・貸与(レンタル)、ならびにこれらを目的として陳列するためには、取り扱う医療機器のクラスに応じた許可・届出が必要です。

高度管理医療機器販売業・貸与業(クラス3・4)

最も厳格な許可制度です。

  • 許可権者:都道府県知事
  • 有効期間:6年(更新制)
  • 管理者要件:一定の資格・経験を有する者
  • 構造設備要件:営業所の面積、保管設備など
  • 許可取得費用:約3万円(自治体により異なる)

必要な管理者の資格例:

  • 医師、歯科医師、薬剤師
  • 高度管理医療機器の販売等に3年以上従事した者
  • 厚生労働大臣指定の講習修了者

管理医療機器販売業・貸与業(クラス2)

届出制となっています。

  • 届出先:都道府県知事(保健所)
  • 有効期間:なし(届出は継続有効)
  • 管理者要件:特定管理医療機器のみ必要
  • 届出費用:無料

特定管理医療機器(管理者が必要なもの)の例:

  • 補聴器
  • 家庭用電気治療器
  • プログラム特定管理医療機器

一般医療機器(クラス1)

販売・貸与に許可・届出は不要です。ただし、以下の点に注意が必要です:

  • 製造販売業者からの適切な仕入れ
  • 品質の確保
  • 適切な情報提供

販売時の遵守事項

すべての医療機器販売業者は以下を遵守する必要があります:

  1. 品質の確保
    • 適切な保管条件の維持
    • 使用期限の管理
    • 不良品の適切な処理
  2. 情報提供
    • 添付文書の提供
    • 適正使用のための情報提供
    • 不具合情報の収集・報告
  3. 販売記録の保管
    • 高度管理医療機器:販売記録の作成・保管義務
    • トレーサビリティの確保
  4. 広告規制
    • 承認・認証範囲内の効能効果のみ標榜
    • 誇大広告の禁止
    • 医療関係者以外への広告制限(一部医療機器)

これらの規制は複雑ですが、医療機器の安全性を確保し、適切に使用されるために不可欠な仕組みとなっています。

特定保守管理医療機器とは

特定保守管理医療機器は、医療機器の中でも特に保守点検、修理その他の管理に専門的な知識及び技能を必要とするものとして厚生労働大臣が指定した医療機器です。これらの機器は、適切な保守管理がなされないと性能が維持できず、場合によっては患者の生命に関わる可能性があります。

特定保守管理医療機器の特徴

  1. 定期的な保守点検が必須 メーカーが定める保守点検計画に基づき、定期的な点検・整備が義務付けられています。
  2. 専門技術者による管理 保守点検は、適切な研修を受けた専門の技術者が実施する必要があります。
  3. 記録の保管義務 保守点検の実施記録を作成し、一定期間保管することが義務付けられています。
  4. 販売時の情報提供 販売業者は、保守点検に関する情報を購入者に提供する義務があります。

主な特定保守管理医療機器の例

画像診断システム

  • MRI装置
  • X線CT装置
  • 血管造影X線装置
  • PET-CT装置
  • マンモグラフィ装置

生命維持管理装置

  • 人工呼吸器
  • 人工心肺装置
  • 人工透析装置
  • 除細動器
  • 閉鎖循環式麻酔器

治療用装置

  • 放射線治療装置
  • レーザー治療器
  • 高エネルギー放射線発生装置
  • ハイパーサーミア装置

その他の医療機器

  • 自動分析装置
  • 超音波診断装置
  • 心電計(特定機種)
  • 内視鏡(電子内視鏡等)

保守点検の実施体制

  1. 医療機関内での実施
    • 臨床工学技士等の専門職が実施
    • 日常点検と定期点検の実施
    • トラブル時の一次対応
  2. メーカー・専門業者による実施
    • 年次点検等の専門的な保守
    • 部品交換を伴う整備
    • 性能・安全性の検証
  3. 保守点検計画の策定
    • 機器ごとの点検頻度設定
    • 点検項目の明確化
    • 実施体制の構築

特定保守管理医療機器を扱う際の注意点

購入・導入時

  • 保守点検体制の確認
  • ランニングコストの把握
  • 保守契約内容の精査

使用時

  • 日常点検の確実な実施
  • 異常時の速やかな対応
  • 使用記録の作成

管理面

  • 保守点検記録の適切な保管
  • 更新時期の計画的な検討
  • 予備部品の確保

特定保守管理医療機器は、高度な医療を支える重要な機器です。適切な保守管理により、安全で効果的な医療の提供が可能となります。医療機関はもちろん、在宅医療で使用される機器についても、適切な管理体制の構築が求められています。

医療機器選択時の注意点

医療機器を購入・使用する際は、安全性と適切性を確保するため、いくつかの重要なポイントを確認する必要があります。特に、インターネット通販の普及により、正規品と偽物を見分けることがより重要になっています。

医療機器表示の確認方法

医療機器を選ぶ際、まず確認すべきは製品に記載されている表示内容です。薬機法により、医療機器には必ず表示しなければならない事項が定められています。

必須表示事項

  1. 「医療機器」の文字 正規の医療機器には必ず「医療機器」という表示があります。
  2. 医療機器の分類 「一般医療機器」「管理医療機器」「高度管理医療機器」のいずれかが表示されています。
  3. 承認・認証・届出番号
    • 承認番号:例「22300BZX00000000」
    • 認証番号:例「223AABZX00000000」
    • 届出番号:例「13B1X00000000000」
  4. 製造販売業者情報
    • 製造販売業者の名称
    • 住所
    • 連絡先
  5. 使用期限・製造番号 特に滅菌済み製品や使い捨て製品には必須です。

確認すべき添付文書の内容

医療機器には添付文書(取扱説明書)が付属(近年はPMDAによる添付文書等情報検索ページから入手できるようになっており、製品に付属していない場合もある)しており、以下の情報が記載されています:

  • 使用目的又は効果
  • 使用方法
  • 使用上の注意
  • 保守・点検に関する事項
  • 製造販売業者の情報

販売店・販売サイトの確認

  1. 実店舗の場合
    • 医療機器販売業の許可証の掲示
    • 管理者の設置(高度管理医療機器等)
    • 適切な保管状態
  2. インターネット販売の場合
    • 販売業許可番号の表示
    • 特定商取引法に基づく表示
    • 連絡先の明記

偽物・未承認品の見分け方

残念ながら、医療機器にも偽物や未承認品が流通しています。これらを見分けるポイントを押さえておきましょう。

偽物・未承認品の特徴

  1. 価格が異常に安い 正規品と比較して極端に安い場合は要注意です。
  2. 表示の不備
    • 医療機器の表示がない
    • 承認番号等が確認できない
    • 日本語表記がない、または不自然
  3. 販売ルートが不明確
    • 個人輸入代行を謳うサイト
    • SNSでの個人間売買
    • 許可番号の表示がない販売者
  4. 効果の誇大表現
    • 「万病に効く」などの表現
    • 承認範囲を超えた効能効果の標榜
    • 医学的にあり得ない効果の主張 

正規品を選ぶためのチェックリスト

□ 製品に「医療機器」の表示があるか
□ 承認・認証・届出番号が確認できるか
□ 製造販売業者が明記されているか
□ 添付文書が付属もしくは入手できるか
□ 販売店に適切な許可があるか
□ 価格が適正か(他店と比較)
□ アフターサービスが明確か 

疑わしい場合の確認方法

  1. PMDAのデータベース検索 医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトで、承認・認証番号から正規品かを確認できます。
  2. 製造販売業者への問い合わせ 製品に記載された製造販売業者に直接確認することも有効です。
  3. 消費者センターへの相談 判断に迷った場合は、消費者センターに相談することができます。

特に注意が必要な医療機器

  • コンタクトレンズ(カラコン含む)
  • 血糖測定器の測定チップ
  • 家庭用の美容機器
  • 海外製の健康器具
  • 使い捨て医療機器の再利用品

医療機器は健康に直接関わる製品です。安さだけで選ばず、正規品であることを確認してから購入することが、自身の健康を守ることにつながります。

よくある質問(FAQ)

Q1: 体温計はなぜ医療機器なのですか?

A1: 体温計は疾病の診断に使用される機器として薬機法で医療機器に指定されており、品質・安全性の基準が設けられています。体温は重要なバイタルサインの一つで、発熱の有無は様々な疾病の診断に不可欠な情報です。そのため、正確な測定値を示すことが求められ、JIS規格などの品質基準を満たす必要があります。水銀体温計、電子体温計、非接触型体温計のすべてが医療機器として規制されています。

Q2: コンタクトレンズが医療機器というのは本当ですか?

A2: はい、コンタクトレンズは視力矯正により身体機能に影響を及ぼすため、クラス3の高度管理医療機器に分類されています。これは度付き・度なし、クリアレンズ・カラーレンズを問わず、すべてのコンタクトレンズに適用されます。目に直接装着するため、不適切な使用により角膜潰瘍などの重篤な眼障害を引き起こす可能性があることから、高度管理医療機器として厳格に規制されています。購入時には眼科医の処方が推奨され、販売店も高度管理医療機器販売業の許可が必要です。

Q3: マッサージ器と医療機器の違いは何ですか?

A3: 家庭用電気マッサージ器は管理医療機器(クラス2)として規制されており、治療効果を謳う場合は医療機器に該当します。医療機器として承認された電気マッサージ器は、「あんま、マッサージの代用」「血行の促進」「筋肉の疲れをとる」「筋肉のこりをほぐす」などの効能効果を標榜できます。一方、単なるリラクゼーション目的の振動器具やマッサージローラーなどは、医療効果を謳わない限り健康器具として扱われ、医療機器には該当しません。

Q4: 医療機器かどうかを確認する方法はありますか?

A4: 製品パッケージに「医療機器」の表示があるか、PMDAの医療機器情報データベースで確認できます。確認方法は以下の通りです:

  1. 製品パッケージや本体の表示を確認 - 「医療機器」「一般医療機器」「管理医療機器」「高度管理医療機器」のいずれかの表示
  2. 承認・認証・届出番号の確認 - 番号が記載されていれば正規の医療機器
  3. PMDAウェブサイトでの検索 - 製品名や番号で検索可能
  4. 添付文書の有無 - 医療機器には必ず添付文書の入手が可能

不明な場合は、製造販売業者に問い合わせることをお勧めします。

Q5: 海外製の医療機器を個人輸入できますか?

A5: 個人使用目的であれば一定条件下で可能ですが、販売・譲渡は薬機法違反となる場合があります。個人輸入の条件は以下の通りです:

輸入可能な条件:

  • 個人使用目的に限定(販売・譲渡は禁止)
  • 通常1〜2か月分の使用量まで
  • 医師の処方せんや指示書が必要な場合がある

注意事項:

  • 日本で未承認の医療機器は品質・安全性が保証されない
  • 健康被害が生じても救済制度の対象外
  • 偽物や粗悪品のリスクがある
  • 家庭用医療機器は原則1セットまで

特に、コンタクトレンズ、血糖測定器などの高度管理医療機器の個人輸入は慎重に行う必要があります。可能な限り、日本で正規に承認された製品を選ぶことをお勧めします。

まとめ

医療機器は、私たちの健康管理から高度な医療まで、幅広い場面で重要な役割を果たしています。本記事では、医療機器の定義から具体例、分類システム、規制まで包括的に解説してきました。

重要なポイントを振り返ると、医療機器とは薬機法により「疾病の診断、治療、予防」または「身体の構造・機能への影響」を目的とした機械器具等で、国が指定したものを指します。体温計や血圧計といった身近なものから、MRIやペースメーカーなどの高度な機器まで、4つのクラスに分類され、それぞれ適切な規制の下で管理されています。

特に注目すべきは、コンタクトレンズや絆創膏など、日常的に使用している製品の多くが医療機器として規制されている点です。これは、私たちの健康と安全を守るための重要な仕組みです。

医療機器を選ぶ際は、「医療機器」の表示や承認番号を確認し、正規品を選ぶことが大切です。また、医療機器と健康器具の違いを理解し、製品の標榜する効果が適切かどうかを判断する知識も重要です。

今後、技術の進歩により、AIを活用した診断支援システムやウェアラブルデバイスなど、新しいタイプの医療機器が登場することが予想されます。医療機器に関する基本的な知識を持つことで、これらの新技術も適切に活用できるようになるでしょう。

医療機器は、適切に使用すれば私たちの健康維持・増進に大きく貢献します。本記事が、医療機器への理解を深め、賢明な選択をするための一助となれば幸いです。

 

参考資料

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