医療機器の承認事項を変更するとき、薬事手続は原則として承認事項の一部変更承認申請(以下「一変申請」)か軽微変更届のいずれかになります。判断の順序は「軽微変更届で済むものを探す」ではなく、まず一変申請が必要な変更に当たるかを判定し、当たらないものが軽微変更届になるという向きです。医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36年厚生省令第1号。以下「施行規則」)第114条の25第1項が、一変申請が必要な変更を列挙してそれ「以外」を軽微な変更と定めているためです。この記事では、条文の3類型による判断手順、区分ごとの様式・提出先・期限、判断に迷う変更の相談先、判断を誤ったときのリスクを条文根拠つきで整理します。
【結論】一変申請か軽微変更届かは「一変に該当するか」から判定します
医療機器の承認事項の変更は、原則が一変申請で、厚生労働省令が定める軽微な変更だけが届出で足ります。医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「薬機法」)第23条の2の5第13項が「承認された事項の一部を変更しようとするとき(当該変更が厚生労働省令で定める軽微な変更であるときを除く。)」は承認を受けなければならないと定め、同条第14項がその軽微な変更について届出を義務づけています。
実務の判断は、施行規則第114条の25第1項が挙げる3類型に当たるかを先に確認し、当たらないと確認できたものを軽微変更届に回すという順序になります。後述する「一変申請及び軽微変更届のいずれも必要でない」範囲も、この3類型に当たらないと確認できた変更の中から通知が切り出したものであり、3類型の判定を飛ばして入る入口ではありません。通知の事例リストから「似たものがあるか」で探し始めると、リストにない変更の扱いを判断できません。条文は軽微な変更を列挙しているのではなく、一変申請が必要な変更を列挙してそれ以外を軽微な変更とするネガティブリスト構造だからです。
目の前の変更 | 手続き | 根拠 |
|---|
施行規則第114条の25第1項の3類型に当たる | 一変申請 | 薬機法第23条の2の5第13項 |
3類型に当たらない(下の行の手続不要範囲にも当たらない) | 軽微変更届(変更後30日以内) | 同条第14項、施行規則第114条の26第2項 |
3類型に当たるか判断できない | 事前に相談(PMDAの簡易相談または登録認証機関) | 薬生機審発0731第5号 記3・記4 |
3類型に当たらないことを確認したうえで、通知が「一変申請及び軽微変更届のいずれも必要でない」とする範囲に当たる(限定条件は通知ごとに異なる。事例名の一致では判定しない) | いずれの手続きも不要(1020第1号・0423第1号では次の一変申請時に記載整備を要する) | 旧一変軽変通知 別紙2(薬食機発第1023001号。薬生機審発0731第5号 記2により現在も有効)、薬生機審発1020第1号 別添 記2(医療機器プログラム)、医薬機審発0423第1号 別添 記2(サイバーセキュリティ対策) |
根拠条文と提出先は、自社品目が承認品目・認証品目・届出品目のどれかで変わります。区分が確定していない場合は医療機器の認証・承認・届出の違いとクラス分類の判定で先に確定させてください。届出品目(一般医療機器等。指定を受けていない体外診断用医薬品を含みます)は、そもそも一変申請・軽微変更届の枠組みではありません。
判断フロー|一変申請が必要になる3類型を条文から確認する
一変申請が必要になるのは、施行規則第114条の25第1項が挙げる3類型に当たる変更です。第1号と第2号は変更事項そのもので判定でき、実務で判断が分かれるのは包括的な第3号です。
薬機法第23条の2の5第13項・第14項の構造
第13項は一変申請の根拠で、括弧書きにより「厚生労働省令で定める軽微な変更」を除いています。第14項は、その除かれた軽微な変更について厚生労働大臣への届出を義務づけています。承認を受けた事項の変更は承認(一変申請)が原則、届出(軽微変更届)が例外という関係です。一変申請(政令で定めるものを除く。)は、機構(PMDA)を経由して行います(同条第15項)。
施行規則第114条の25第1項の3類型
第13項の「軽微な変更」は、施行規則第114条の25第1項が「次の各号に掲げる変更以外のもの」として定義しています。各号は次の3つです。
- 使用目的又は効果の追加、変更又は削除(第1号)
- 病原因子の不活化又は除去方法に関する変更(第2号)
- 前2号のほか、製品の品質、有効性及び安全性に影響を与えるもののうち、厚生労働大臣が法第23条の2の5第13項の承認を受けなければならないと認めるもの(第3号)
体外診断用医薬品は同条第2項に別の3類型(使用目的の追加・変更・削除/反応系に関与する成分の追加・変更・削除/同旨の包括規定)が置かれ、判定軸が異なります。
第3号を具体化した通知(薬生機審発0731第5号)
第3号に何が含まれるかは、「医療機器の一部変更に伴う軽微変更手続き等の取扱いについて」(平成29年7月31日付け薬生機審発0731第5号)の記1が示しています。通知の書きぶりは「厚生労働大臣が…承認を受けなければならないと認めるものには以下の変更が含まれ」であり、次の3点は第3号に該当する変更の代表例です。実務ではこの3点を一変該当性の物差しとして使いますが、3点のいずれにも当たらないことだけを理由に軽微と断定することはできません。
- (1) 製品の品質、有効性又は安全性に係る既存リスクを増大させる又は新たなリスクを生じさせる変更であって、人の生命及び健康に与える影響が明らかに軽微であるとは言えないもの
- (2) その変更によって製品の品質、有効性及び安全性に与える影響が十分に推定できず、人の生命及び健康に与える影響が明らかに軽微であるとは言えないもの
- (3) 製品の形状、構造の変更であって、製品の同一性が損なわれないことが明らかでないもの(小規模な変更であって繰り返すことにより同一性が損なわれるもの、形状の著しい変化により製品の同定を困難にする変更、大幅な構造の変更により実質的に使用方法等を変化させる変更など)
いずれも「明らかに軽微であるとは言えない」「明らかでない」という書き方です。軽微だと積極的に示せない変更は一変申請側に寄る設計になっています。なお同通知は発出当時の項番で書かれており、本文中の「法第23条の2の5第11項及び同条第12項」は、その後の改正で繰り下がった現行の第13項・第14項に読み替えて参照します。
第3のルート|一変申請にも軽微変更届にも当たらない変更がある
3類型に当たらないと確認できた変更については、さらに、一変申請にも軽微変更届にも当たらない範囲があります。原型は旧一変軽変通知(「医療機器の一部変更に伴う手続について」平成20年10月23日付け薬食機発第1023001号)の別紙2「一変申請及び軽微変更届が必要でない範囲について」で、薬生機審発0731第5号 記2が「旧一変軽変通知別紙2については、本通知による変更等はない」としているため現在も有効です(別紙2の中身は後述します)。この取扱いは医療機器プログラムに限られず、認証品目にも及びます。 旧一変軽変通知は本文で対象を「製造販売承認又は認証を受けた医療機器」とし、別紙2の事例も「承認(認証)を得ている範囲内で」と書いています。医薬機審発0423第1号も「承認(認証)事項一部変更承認(認証)申請…及び軽微変更届のいずれも必要でない事例」としています。ただしこれは施行規則第118条第1項の準用によるものではなく、通知が承認・認証の双方を対象としているためです(後掲の「判定基準は承認品目と同じ」は施行規則第114条の25の準用の話であり、この第3のルートの根拠にはなりません)。そのうえで、機器の類型ごとに整理した通知が2本あります。
医療機器プログラムについては、「医療機器プログラムの一部変更に伴う軽微変更手続き等の取扱いについて」(平成29年10月20日付け薬生機審発1020第1号)が別に整理しています。同通知の別添は、軽微変更届の対象となる事例として、ダウンロード販売への変更・追加、最終製品の保管を行う製造所の追加・変更・削除、動作環境であるOSの種類やクラウド動作の追加・変更・削除、データの入出力に使用する記録媒体の追加・削除を挙げています。
そのうえで別添の記2は、一部変更承認申請及び軽微変更届のいずれの手続きも要さない事例として、動作環境であるOS等の変更・追加・削除(医療機器としての使用目的又は効果及びその性能に影響を与えない場合に限る。)、動作環境として推奨する汎用PCや情報端末の追加・変更・削除、供給する記録媒体の変更・追加・削除、インストール可能数の扱いの4つを挙げ、これらの変更等に伴い医療機器としての機能の追加・変更等がない場合に限り、一部変更承認申請及び軽微変更届のいずれの手続きも必要でないとしています。インストール可能数については、あえて承認書等に記載した場合でも、インストール可能数の変更については一部変更承認申請及び軽微変更届のいずれの手続きも必要でないと明記されています。ただし、次の一変申請時には記載整備を要する点に留意してください。同じOSでも境界が分かれます。記1が挙げるのは「異なる種類の動作環境であるOSへの変更・追加」=軽微変更届、記2が挙げるのは「動作環境であるOSバージョン等の追加・変更・削除」=手続不要です。
ここまでの事例は、いずれもソフトウェア本体の外側の事項です。プログラム本体の変更(アルゴリズムや判定性能)がどのルートに入るかは別に整理します。旧一変軽変通知の別紙2は「承認(認証)を得ている範囲内で仕様、性能等に影響を与えないソフトウェア(プログラム)の変更」を、一変申請・軽微変更届のいずれも必要でない事例として挙げています。逆に、承認された範囲を出る変更や有効性・安全性に影響する変更は一変申請側です。PMDAの公表資料「医療機器プログラムの承認事項の一部変更の考え方について」は、承認書の「使用目的又は効果欄」「形状、構造及び原理欄」「性能及び安全性に関する規格欄」などに記載された事項を変更しようとする際、当該変更が有効性や安全性に影響を与えるものである場合は一部変更承認申請が必要になることがあるとし、アルゴリズムの変更や、データ蓄積によって判断基準や診断性能が影響を受ける製品を例に挙げています。判断に悩む場合はPMDAに相談することが推奨されています。
条文上は施行規則第114条の25第1項第3号での判定です。第1号(使用目的又は効果の追加・変更・削除)・第2号(病原因子)に当たらないソフトウェア改良は、薬生機審発0731第5号 記1の(1) 既存リスクの増大・新規リスクの発生と(2) 影響が十分に推定できないことで評価します(記1の(3)は製品の形状、構造の変更を対象としているため、ソフトウェア改良の判定軸にはなりません)。判定精度が上がることは、それだけで軽微側に働くわけではありません。承認書の性能及び安全性に関する規格欄の記載そのものが変わる、あるいは記載された範囲を出る場合があるためです。連続的・高頻度の改良を計画するなら、後述の変更計画確認(IDATEN)の対象事項に「性能及び安全性に関する規格」が含まれています(施行規則第114条の45の3第1項第4号)。
サイバーセキュリティ対策に関連する変更については、「医療機器のサイバーセキュリティ対策に関連する一部変更に伴う軽微変更手続き等の取扱いについて」(令和6年4月23日付け医薬機審発0423第1号)が同じ2部構成で整理しています。同通知の別添の記2も「一変申請及び軽微変更届のいずれの手続きも要さない事例」を挙げており、その対象には、申請書にネットワークポートの説明が書かれているネットワーク接続できるハードウェア医療機器のポート削除などが含まれます。手続不要の取扱いがプログラム以外にも及ぶことは、この通知からも確認できます。ただし同通知の別添は冒頭で、ここで示すのは、製品の有効性及び安全性に関わる機能に影響しない場合に限るものであり、例えば、ペースメーカや植込み型除細動器等で医療機関側が遠隔モニタリングを行う目的でネットワークに接続している医療機器は、ネットワークへの接続の可否が当該医療機器の有効性及び安全性の根幹に関わるため、本事例の対象外となるとし、本来の使用方法ができなくなる変更も本事例の対象外であることに留意するよう求めています。上記のポート削除の事例にも「削除を行うことで製品の有効性及び安全性に関わる機能に影響する場合は含まない」という条件が付いています。同通知も、事例はこれらに限るものではないとし、個別の事例における取扱いは必要に応じ総合機構又は登録認証機関に相談するよう求めています。
3類型に当たらないと確認できたら、軽微変更届に進む前に各通知の記2に当たらないかを確認します。判定は事例名の一致ではなく柱書の限定(旧一変軽変通知 別紙2=有効性・安全性と直接の関連性がなく同一性を損なわないこと、1020第1号・0423第1号=機能の追加・変更等がないこと)で行い、記載整備が必要になるのは1020第1号・0423第1号の範囲だけです。
なお1020第1号の別添は、以下は例を示すものであり、軽微変更届の対象となる事例並びに一部変更承認申請及び軽微変更届のいずれも必要でない事例はこれらに限るものではないとして、個別の事例における取扱いは必要に応じ総合機構又は登録認証機関に相談するよう求めています(規制ルート全体はSaMDのQMS対応を参照)。
承認品目・認証品目・届出品目|手続き・様式・提出先・期限の一覧
手続きの名称・様式・提出先は品目の区分ごとに異なります。認証品目は施行規則第118条第1項が承認品目の規定を準用し、同条第2項の読み替え表で様式番号と提出先が置き換わります。
区分 | 手続き | 根拠条文 | 様式 | 提出先 | 期限 |
|---|
承認品目(一変) | 一部変更承認申請 | 薬機法第23条の2の5第13項、施行規則第114条の24第1項 | 様式第63の9(正本1通及び副本2通) | 厚生労働大臣(申請(政令で定めるものを除く。)は機構を経由・薬機法第23条の2の5第15項) | 変更前(承認を受けてから変更) |
承認品目(軽微) | 軽微変更届 | 同条第14項、施行規則第114条の26第1項 | 様式第63の10(正副2通) | 厚生労働大臣(機構に医療機器等審査等を行わせる場合は「機構」と読み替え・施行規則第114条の26第3項) | 変更後30日以内(同条第2項) |
認証品目(一変) | 認証事項の一部変更認証 | 薬機法第23条の2の23第7項、施行規則第118条第1項 | 様式第65(正副2通) | 当該登録認証機関 | 変更前(認証を受けてから変更) |
認証品目(軽微) | 軽微変更届 | 薬機法第23条の2の23第8項、施行規則第118条第1項 | 様式第66(正副2通) | 当該登録認証機関 | 変更後30日以内 |
届出品目(一般医療機器等) | 変更の届出 | 薬機法第23条の2の12第2項・第23条の2の13第1項、施行規則第114条の47第2項・第4項 | 様式第40(機構に届け出る場合は正副2通) | 機構(PMDA)(薬機法第23条の2の13第1項・施行令第37条の38により、専ら動物用のものを除く届出品目は機構に届け出る) | 変更後30日以内 |
軽微な変更の範囲そのものは、認証品目でも施行規則第114条の25が準用されます(第118条第1項)。判定基準は承認品目と同じで、変わるのは様式と提出先です。
30日の向きを取り違えない
期限の「30日」は制度によって向きが逆になります。軽微変更届と届出品目の変更届は変更した後30日以内、後述する変更計画確認に基づく届出は変更を行う日の30日前までです。同じ「30日」で覚えると提出時期を誤ります。
一変申請でQMS適合性調査が不要になる場合
一変申請をしても、常に適合性調査を受け直すわけではありません。同法施行令(昭和36年政令第11号)第37条の25第1項は、薬機法第23条の2の5第1項又は第23条の2の17第1項の承認を受けた者について、一変の内容が当該品目の製造管理又は品質管理の方法に影響を与えないもの(厚生労働省令で定めるものに限る)であるときは、薬機法第23条の2の5第13項において準用する同条第6項及び第8項を適用しないと定めています。この「厚生労働省令で定める変更」は、施行規則第114条の31が「製造管理又は品質管理の方法に影響を与えない変更」としています。認証品目には施行令第40条の4第1項に同旨の特例があります。調査が必要な場合の申請は様式第63の11(認証品目は第118条の読み替えで様式第67)で、調査の範囲や準備はQMS適合性調査とは?で整理しています。
軽微変更届で足りる典型ケースと、事前確認が必要なケース
薬生機審発0731第5号は、軽微変更届の対象となる事例を別紙1に、事前確認が必要な範囲を別紙2に示しています。別紙1は「軽微変更届で対応できる」例、別紙2は「軽微の蓋然性は高いが例外がありうるので事前に確認する」範囲という違いです。なお同通知の記2は、旧一変軽変通知(「医療機器の一部変更に伴う手続について」平成20年10月23日付け薬食機発第1023001号)の別紙1で示した事例についても引き続き軽微変更届の対象となるとし、旧一変軽変通知の別紙2については本通知による変更等はないとしています。この旧一変軽変通知の別紙2は「一変申請及び軽微変更届が必要でない範囲について」を示したもので、「変更内容が総合的に判断して有効性及び安全性と直接の関連性を有さず、その医療機器の本質からみて同一性を損なうものでないときに限り、原則、承認事項の一部変更の手続は必要としない」という柱書のもとに、シリーズ番号又はカタログ番号の変更、包装単位の変更、医用電気機器のケーシング・キャビネット等の色・塗装・めっき又は材料の変更、品目仕様等に関係しない場合における筐体の寸法又は重量の変更など、医療機器プログラムに限らない事例が挙げられています。前掲の第3のルートは、ここが原型です。ただし、事例名が一致すれば足りるというものではありません。判定するのは柱書の「同一性を損なうものでないとき」に当たるかです。小規模な変更であっても繰り返しにより同一性が損なわれる場合は、前掲の第3号の物差し(3)「小規模な変更であって繰り返すことにより同一性が損なわれるもの」に戻り、一変申請側で扱います。同種の変更を過去にも行っている場合は、今回の変更だけを見るのではなく、繰り返しによって同一性が損なわれていないかを評価してください。判断が分かれる場合は、総合機構又は登録認証機関に相談してください。事例を探すときは、0731第5号の別紙だけでなく旧一変軽変通知の別紙も併せて確認してください。
別紙1|軽微変更届の対象として示されている事例
別紙1は申請書の欄ごとに事例を挙げています。条件(ただし書き)が付いているものが多く、条件を外すと同じ変更でも軽微変更届では扱えません。代表的なものを挙げます。
- 構造、機能等の変更を伴わない構成品の名称等の変更:構成品として含まれる承認・認証・届出済みの医療機器について、承継、いわゆるマルT申請(昭和62年9月21日付け薬発第821号に基づく申請)による承認又は合併後の存続法人による同一製品の製造販売届出に伴い、販売名・製造販売業者名・承認・認証・届出番号等が変わった場合の記載反映。ただし構成品の販売名等が変更されたことを示す資料(例えば、構成品の製品自体に変更がない旨を記載した供給証明書など)を添付すること
- 製品の品質、有効性及び安全性に与える影響が明らかに軽微な、製品各部の寸法・サイズ等の変更:単回使用組織生検用針等における針管部の短縮又は中間径の追加。ただし使用目的、使用方法等に影響を及ぼさない範囲に限る
- 能動型医療機器のデータ関連機能:データの保存、汎用IT機器で読み込める形式への変換(PDF化等)、読み込み、転送、印刷機能及びネットワーク通信機能の追加・変更・削除。ただしいずれもデータの保存を行うためのもので、診断等に用いることを意図している場合を除く
- 実質的な変更を伴わない比較試験の設定対象機器の記載変更:登録認証機関の変更に伴う認証番号のサブ番号の変更。ただし変更されたことを示す資料を添付すること
- 承認(認証)事項に変更がない計量単位の変更:計量法、日本工業規格、日本薬局方等の単位を規定する法令・規則等の改正を踏まえた変更(製品が含有する成分の分量等に変更がある場合を除く)
このただし書きは2つの要件から成ります。①追加・変更・削除する機能がいずれもデータの保存を行うためのものであること、②診断等に用いることを意図している場合に当たらないこと、の両方を満たす必要があります。保存・転送の対象が解析結果のように診断に用いられるデータである場合、②の当てはめは自明ではありません。境界に当たる変更は、記4のとおり必要に応じ総合機構又は登録認証機関に相談してください。
重要な留保が同通知の記4に置かれています。別紙1及び別紙2の事例は例として示したものであり、軽微変更届の対象となる変更はこれらに限られません。さらに、同一の一般的名称の医療機器であっても変更内容の程度等が異なる場合や、同一の変更内容であっても一般的名称が異なる場合等は、リスクの程度が異なるため同様の取扱いにならない場合があるとされています。別紙1に似た事例があることは、自社の変更が軽微だという結論にはなりません。
製造所の追加・変更をどう扱うか
製造所の追加・変更の取扱いは、「医療機器及び体外診断用医薬品の製造所の変更又は追加に係る手続の迅速化について」(平成26年11月19日付け薬食機参発1119第7号・薬食監麻発1119第12号)が定めています。同通知の記7(3) は、別途通知されるまでの間、旧一変軽変通知の別紙1に掲げる「6.製造方法欄」及び「7.製造販売する品目の製造所欄」の取扱いについては、本通知によるものとするとしています。置き換えられているのはこの2欄で、別紙1の他の欄の事例が引き続き軽微変更届の対象であること自体は、前述の薬生機審発0731第5号 記2のとおりです。製造所の追加・変更を判定するときは、別紙1のこの2欄ではなく平成26年通知を見てください。
医療機器の場合、同通知の記2(1) は工程ごとに次のように整理しています。
- 設計に係る製造所:同一法人内において設計部門等を変更(一部の人員の異動等の軽微な変更を除く。)することなく設計に係る製造所の移転のみを行う場合は軽微変更届でよい(備考欄に「設計部門等の移転」と記載し、設計部門等そのものに変更がないことを示す書面を添付)。ただし、他の法人への設計の委託又は承継等、設計部門等又はその品質管理監督システムの主体の変更を伴うものについては、一部変更承認(認証)申請が必要
- 主たる組立てその他の主たる製造工程に係る製造所:「主たる組立てに係る製造所のみを変更又は追加する場合にあっては、一部変更承認(認証)申請が必要であること。ただし、当該医療機器について、製造所の変更又は追加後において有効な基準適合証の交付を受けている場合にあっては、軽微変更届出を行うことで差し支えないこと。」
- 滅菌に係る製造所:「滅菌に係る製造所のみを変更又は追加する場合にあっては、一部変更承認(認証)申請及び追加的調査申請が必要であること。ただし、過去5年以内に、追加される製造所及び当該製造所で行われるべき工程(滅菌方法を含む。)が記載された基準適合証又は追加的調査結果証明書(調査結果が適合であるものに限る。)が交付されている場合にあっては、軽微変更届出を行うことで差し支えないこと。」(この「追加的調査」は法第23条の2の5第8項の調査で、施行規則第114条の33が調査を行う場合を定めています)
- 国内における最終製品の保管に係る製造所:「保管に係る製造所のみを変更する場合にあっては、軽微変更届出を行うことで差し支えないこと。」
- 品質管理監督システムに変更がない場合の特例:製造業者の法人格に変更がない住所表記・名称表記等の変更、および吸収合併その他の理由による社名の変更であって品質管理監督システム(製造業者の構造設備を含む)に変更がない場合は軽微変更届でよい。なお、法人格の変更がある場合は、新規の製造業登録の取得が必要(この場合、製造販売業者は製造業者の品質管理監督システムに変更がないことを確認し、別紙様式により軽微変更届書に添付する)
この迅速化の取扱いが使えるのは、製造所の変更又は追加のみを行おうとする場合、又は製造所の変更又は追加及び製造方法の軽微な変更のみを行おうとする場合であって、同通知の記3に示す手続を行うものに限られます。遺伝子組換え技術応用医療機器と、品目ごとに調査を行うべきものとして厚生労働大臣が指定する医療機器又は体外診断用医薬品(平成26年厚生労働省告示第317号)は対象外です(記1)。
滅菌について一部変更承認(認証)申請が必要とされた場合の複数品目の進め方は、同通知の記3(2)にあります。関係する基準適合証の数及び製品群に関わらず、滅菌に係る登録製造所を変更する品目のうち一の品目を選択して一部変更承認(認証)申請を行い(変更又は追加しようとする製造所の登録を受けた上で申請することとされています)、他の品目については、その調査により発行された基準適合証を活用して軽微変更届出を行うこととされています。この場合、軽微変更届出の備考欄に、その調査により交付された基準適合証の番号と交付年月日を記載することも求められています。
また同通知の記7(1) は、機構又は登録認証機関が行うQMS調査により発行される基準適合証に基づき、同一製品群の品目について同様の製造所の追加・変更を行おうとする場合は、軽微変更届出により行って差し支えないとしています。この場合も、軽微変更届出の備考欄に当該基準適合証の番号と交付年月日を記載します。
なお、旧一変軽変通知の別紙1 6.7)②が条件として参照している製造所一変迅速通知(平成19年3月30日付け薬食審査発第0330004号・薬食監麻発第0330012号)は、上記の平成26年通知により「旧通知は本通知の適用に伴い廃止します」とされ、現在は失効しています。別紙1の当該事例に付いていた「1品目目は製造所一変迅速通知の3の(1)の⑦に従って、一部変更承認を取得した場合に限る」という条件を探しても、参照先の通知には到達できません。
滅菌製造所の変更・追加を検討する場合は、平成26年通知の条件で判定してください。判断が分かれる場合は、総合機構又は登録認証機関に相談してください。
滅菌製造所の追加が無条件に軽微になるわけではありません。同通知の各項目にはいずれもただし書きが付いています。これらの事例に当たらない製造所の追加は、施行規則第114条の25第1項の3類型(とくに第3号)の評価に戻ります。
QMS適合性調査との関係も確認してください。前述の適用除外は「製造管理又は品質管理の方法に影響を与えない変更」に限られます(施行規則第114条の31)。また、基準適合証があることで調査を要しないための要件は、当該品目が基準適合証と同一の区分に属すること(薬機法第23条の2の5第7項第1号)と、その品目を製造する全ての製造所が当該基準適合証に係る製造所であること(同項第2号)です。基準適合証の範囲外の製造所が加われば、この第2号の要件を満たさなくなります。ただし同項第2号は「滅菌その他の厚生労働省令で定めるもののみをする」製造所を「全ての製造所」から除いており、その省令が定める製造工程は滅菌、最終製品の保管、その他厚生労働大臣が適当と認める製造工程です(施行規則第114条の32)。滅菌のみ・最終製品の保管のみを行う製造所の追加は、この除外に当たりえます。ただし、この除外は第6項の調査(承認を受けようとするときと、承認取得後3年を下らない政令で定める期間を経過するごとの適合性調査)の要否を判定するときに、その製造所を「全ての製造所」に数えないという意味であり、追加した滅菌製造所そのものが調査の対象外になるという意味ではありません。基準適合証に記載された製造所と同一でない滅菌・最終製品の保管の製造所(施行規則はこれを「例外的製造所」と呼びます)については、過去5年以内にその製造所が記載された基準適合証及び調査結果証明書(調査結果が適合であるものに限る。)等が交付されていないときは、法第23条の2の5第8項の調査を行うものとされています(施行規則第114条の33第1項第5号)。同条第2項はこの調査を「追加的調査」と呼び、結果を調査結果証明書(様式第63の13)で交付するとしています。前掲の平成26年通知 記2(1)③ が滅菌製造所の変更・追加に「一部変更承認(認証)申請及び追加的調査申請が必要」としつつ、過去5年以内に基準適合証又は追加的調査結果証明書が交付されている場合を除いているのは、この規定に対応したものです。
なお、製造所の追加には製造業の登録など別の手続が伴う場合があります。本記事は一変申請か軽微変更届かの判定に絞っているため、そちらは範囲外です。
別紙2|事前確認カテゴリー
別紙2は「軽微変更届の対象となる蓋然性が高いものの、一変申請が必要な例外が想定されるため事前の確認が必要」とされる範囲で、通知はこれを事前確認カテゴリーと呼んでいます(記3)。たとえば、製造工程や品質管理の見直しに伴って承認書(認証書)に記載された範囲を超える寸法許容幅を変更する場合、有線・無線通信機能における通信規格の追加・変更・削除(IEEE 802.11規格、Bluetooth規格等のバージョンアップ、規格の削除など)、用時滅菌医療機器又は再使用可能な医療機器における滅菌方法又は消毒方法の変更に係る使用方法欄の変更(滅菌等のバリデーションが適切に行われ、製品及び包装の耐久性に与える影響が軽微なものに限る)などが挙げられています。
同通知はあわせて、事前確認カテゴリーは軽微変更届の対象となる蓋然性が高いものが該当する範囲であり、一変申請が必要と考えられる変更を対象としたものではないと注記しています。一変申請の可能性が高い変更を事前確認に持ち込む使い方は想定されていません。逆に、事前確認カテゴリーに当たる変更を確認を経ずに軽微変更届で処理し、後に一変申請が必要だったと判断されれば、後述の「一変申請が必要な変更を届出で済ませた場合」のリスクに直結します。
相談先|承認品目はPMDA、認証品目は登録認証機関
承認品目は、PMDAの簡易相談のうち相談区分「医療機器・体外診断用医薬品変更届出事前確認」で事前に確認を受け、そのうえで軽微変更届を提出する運用が示されています。この区分で回答が得られるのは、変更計画確認手続制度に基づく確認済みの変更計画に関するものと、薬生機審発0731第5号の別紙2に関するものだけです。別紙1に該当する変更も、別紙1・別紙2のいずれにも当たらない変更も、この区分では受けられません。回答は電子メール又はファクシミリで、申込み受付日から2週間を目途に行われます(PMDA「対面助言のうち簡易相談」)。手数料や申込方法はPMDAの案内で確認してください。
認証品目については、届出提出予定の登録認証機関に相談することとされています(同通知 記3)。登録認証機関の相談は機関ごとに運用が異なるため、所要期間や費用は相談先の機関に確認してください。
PMDAは同じ簡易相談の別区分「医療機器・体外診断用医薬品」を設けており、その対象に新規申請、一部変更申請、軽微変更届、届出不要の該当性(外観、形状、使用目的、仕様等から判断できるものに限る。)に関するものを明示しています(PMDA「対面助言のうち簡易相談」)。同通知の記4も、別紙1及び別紙2の事例は例として示したものであるとしたうえで、必要に応じ総合機構又は登録認証機関に相談することとしています。区分を取り違えると、回答が得られないまま手数料と時間を費やすことになります。
手続きを軽くする2つの制度|原材料変更の新通知と変更計画確認(IDATEN)
原材料の変更手続を整理した通知と、あらかじめ変更計画の確認を受けておく変更計画確認手続制度(IDATEN)の2つは、条件に当てはまれば手続きの負担を軽くできます。いずれも一変申請が不要になる範囲は限定されているため、適用条件の確認が前提です。
原材料の変更手続(医薬機審発0130第1号)
原材料の変更については、「『医療機器の原材料の変更手続について』の全部改正について」(令和8年1月30日付け医薬機審発0130第1号)が現行の取扱いを示しています。この通知の発出により、旧通知(平成25年3月29日付け薬食機発0329第7号)とその質疑応答集(平成25年5月29日付け薬食機発0529第4号)は廃止され、同日付けで新しい質疑応答集(令和8年1月30日付け事務連絡「医療機器の原材料の変更手続に関する質疑応答集(Q&A)について」)が発出されています。旧通知と旧Q&Aを前提にした社内手順書は、新通知と新Q&Aに合わせて改訂が必要です。
対象は、承認申請書・認証申請書の「5 原材料欄」に記載された原材料のうち、生体に直接又は間接的に接触するものです。ただし、植込み型医療機器の植込み部分の原材料、身体への接触期間が「長期的接触」と分類される構成品/部品の原材料、生物由来原材料(ヒトその他の生物に由来するが生物由来原料基準(平成15年厚生労働省告示第210号)が適用されないものは除きます)、生分解性原材料、機能性被覆材(抗血栓性コート、高度潤滑性コートなど)は、より慎重に取り扱うべきものとして原材料変更のリスクが低いことが明らかである事例のみに対象が限定されます。
このうち「機能性被覆材」の範囲は、同日付けの質疑応答集(Q21)が示しています。該当するものとして挙げられているのは、その被覆材が部分的に剥離するだけで医療機器の機能が大幅に低下する可能性があるものや、剥離片が微小粒体(パーティクル)となって安全性上の悪影響を及ぼすリスクの高いものです。例えば親水性を高めることで潤滑性を高める被覆材は「高度潤滑性コート」に該当する一方、シリコーン油、PTFEのような一般的な潤滑剤・被覆材は「高度潤滑性コート」に該当しないとされています。自社のコートの名称が通知の例示と一致するかではなく、この考え方で判定してください。該当性が不明である場合は、承認品目は簡易相談、認証品目は個別に登録認証機関へ問い合わせることとされています。
ただし、この限定で終わりではありません。通知は続けて、これらに該当する原材料についても、例えば同通知の記4「原材料の使用前例の考え方について」に従い、「国内外の承認又は認証の前例があることや、十分な臨床使用実績を活用することで」当該原材料変更のリスクが低いことが確認できれば、本通知の対象とすることが可能となるとしています。使用前例は対象化の手段の一例として示されたものです。
同通知の記4は、変更後の原材料が次の①〜⑥の条件をすべて満たし、既に国内もしくは外国(本邦と規制調和の実績があり、高い水準にあると認められる承認の制度又はこれに相当する制度を有している国(例えば、米国)をいうとされています)において承認又は認証されている医療機器に使用されている場合に、当該原材料に使用前例があるものとしています。
- 生物由来原材料でないこと
- 植込み構成品の原材料変更でないこと、又は変更前後で一般名に変化がないこと
- 規格・仕様(物理的特性など)、添加剤成分の種類及び配合量などが、使用実績を参照する原材料と変わらないこと
- ISO 10993-1の接触部位カテゴリが同等以上の使用実績があること
- ISO 10993-1の総接触時間カテゴリ(一時的接触、短・中期的接触、長期的接触)が同等以上の使用実績があること
- 当該原材料に起因する回収報告・重大な有害事象の報告が当局になされていないこと
なお、外国で承認又は認証されている医療機器を使用前例とするのであれば、十分な臨床使用実績がある場合に限られます。この「外国」について質疑応答集(A23)は、旧通知のQ&Aで対象国とされていた欧州・カナダ・オーストラリアが本通知下でも認められること、いずれもGHTF参加国であること、対象国に英国も含むことを明示しています。通知本文の例示が米国のみであることを理由に、これらの国の前例を除外する必要はありません。また「十分な臨床使用実績」については、外国で承認や認証を得ていても、例えば「数台しか販売実績がない」や「数症例にしか臨床使用実績がない」場合は、本通知における「十分な臨床使用実績がある」とは言わないとされています。長期的接触の部品や機能性被覆材を持つ品目でも、この6条件で使用前例を示せれば通知の対象に入る余地があります。
通知の記3は、対象となる原材料について本質的な品質、有効性及び安全性に影響を与えない変更を行うものである場合には軽微変更届出による変更手続を行うことが可能であるとしたうえで、軽微変更届で扱えない変更の類型を5つ挙げています。(1) 既存リスクを増大させる又は新たなリスクを生じさせる原材料変更、(2) 製品の品質、有効性及び安全性に与える影響が十分に推定できないもの、(3) 使用目的の範囲や保険適用の区分を明らかに超えるもの、(4) 治療又は診断効果に与える影響が軽微であるとは言えないもの、(5) 上市後に生じた重大な不具合を解消する目的で行う原材料変更です。これらに該当する場合は少なくとも一部変更承認/認証申請が必要で、変更内容によっては新規申請が必要になります。5類型に当たらないことは、そのまま軽微変更届で足りることを意味しません。上記の積極要件、すなわち本質的な品質、有効性及び安全性に影響を与えない変更であることを示せて初めて、軽微変更届の手続に乗ります。
なお通知の記5は、本通知による個々の原材料の取扱いについては、必要に応じ独立行政法人医薬品医療機器総合機構への簡易相談、登録認証機関への個別相談等を利用して相談することとしています。対象原材料に当たるか、軽微変更届で扱える変更かの判断がつかない場合は、承認品目はPMDAの簡易相談、認証品目は登録認証機関への個別相談が受け皿になります。
なお、原材料自体が同一で、供給者の名称又は原材料名のみが変わる場合、薬事手続は不要です(質疑応答集A7)。旧一変軽変通知では軽微変更届の対象とされていましたが、旧原材料変更通知の発出時に不要と改められ、本通知でも取扱いは変わりません。原材料欄に関する次回の薬事手続の機会に反映し、変更があったことを社内文書に記録して、求めがあれば説明できるようにしておきます。供給者名や原材料名の変更とあわせて原材料仕様が変わる場合は薬事手続が必要になるため、名称のみの変更かどうかを供給者から確認してください。
手続面では、製造販売業者(外国特例承認等の場合は選任製造販売業者)が原材料の変更を軽微変更届で行う場合、品質、有効性及び安全性に与える影響について事前に確認し、検証または評価したことがわかる自己宣言書を軽微変更届に添付すること、軽微変更届の備考欄に「令和8年1月30日付け医薬機審発0130第1号通知に基づく原材料の変更」と記載することが求められています。自己担保による検証試験及び評価を行った場合、その試験結果等の資料は製造販売業者の責任の下で適切に保管します。通知は、審査の過程等で原材料変更に関する資料が必要であると判断された場合は、必要な資料の提出を求めることがあるとしており、保管は届出時に提出しないことと同義ではありません。
この自己宣言書は、変更前に影響を確認し検証または評価した事実が社内に残っていることを前提にした書類です。設計変更の起票・影響評価・検証結果・承認記録が別々の台帳や共有フォルダに散っていると、届出のたびに根拠資料を集め直すことになり、後から根拠の提示を求められたときに再現性のある説明ができません。医療機器QMSに特化した電子QMS(eQMS)であれば、変更管理の記録と検証・評価の証跡、承認履歴を変更案件ごとに紐づけた状態で維持できます。QMSmartのような医療機器向けeQMSは、薬事手続の根拠資料を後から探さない体制の土台としても検討する価値があります。
変更計画確認手続制度(IDATEN)
もう一つが、薬機法第23条の2の10の2の変更計画確認です。承認事項の一部の変更に係る計画をあらかじめ厚生労働大臣に確認してもらう制度で、対象は承認品目のみです(同条第1項が「第23条の2の5第1項の承認を受けた者」と限定しており、認証品目には適用がありません)。
確認を受けられる変更事項は、使用目的又は効果、形状、構造及び原理、原材料、性能及び安全性に関する規格、使用方法、保管方法、有効期間、製造方法、製造販売する品目の製造所の9事項です(施行規則第114条の45の3第1項)。逆に、法第41条第3項の規定により定められた基準に適合しないこととなる変更、法第42条第2項の規定により定められた基準に適合しないこととなる変更、病原因子の不活化又は除去方法に関する重要な変更、当該医療機器の品質、有効性及び安全性に重大な影響を与えるおそれのある変更は対象外です(同第114条の45の4第1項)。同条は人工知能関連技術を活用した医療機器を除くもの(第1項)と、これに限るもの(第2項)とで項を分けていますが、両項の各号は同じ文言で、対象外となる変更の要件に差はありません(体外診断用医薬品は第3項で3号構成になります)。項を分ける軸は人工知能関連技術を活用しているかどうかであり、AIを用いないプログラム医療機器は第1項の側で判断します。差が出るのは、対象外となる変更の要件ではなく申請の添付資料です。施行規則第114条の45の2第3項は、人工知能関連技術を活用した医療機器の変更計画の確認について、活用しないものと同じ資料(変更計画/設計及び開発の検証方法に関する資料)に加えて、変更計画の作成及び実施に関する手順と、その他人工知能関連技術の適正かつ円滑な管理に必要な資料を求めています(同項第2号イ・ロ)。具体的な項目は「医療機器の変更計画の確認申請の取扱いについて」(令和2年8月31日付け薬生機審発0831第14号)の別表2に示されています。なお「人工知能関連技術」は官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)第2条第2項の定義によります(規制ルート全体はSaMDのQMS対応を参照)。
効果は2段階です。確認済みの計画に従った変更のうち「製造方法の変更その他の厚生労働省令で定める変更に限る」ものは、変更を行う日の30日前までに届け出れば一変承認を受けることを要しません(同法第23条の2の10の2第6項、施行規則第114条の45の13)。この範囲を定めているのは施行規則第114条の45の12ですが、同条は医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律関係手数料令(平成17年政令第91号。以下「手数料令」)第12条第1項第1号イ(5)〜(9)(体外診断用医薬品は同号ロ(1)及び(4)〜(6))を引く形で定めており、確認は同令まで2段たどる必要があります。 さらに、そのイ(5)〜(9)が列挙しているのは「特定高度管理医療機器であって審査に係る基準が定められているもの」「審査に係る基準が定められている医療機器」などの医療機器の区分であって、変更内容の類型ではありません。自社品目が対象区分に入るかは手数料令で確認できますが、個別の変更が届出で足りるかは、変更計画の確認を申し出る段階で詰めることになります。
届出ができる者にも条件があります。行おうとする変更が同法第23条の2の10の2第3項の厚生労働省令で定めるもの(製造管理又は品質管理の方法に影響を与えるおそれがある変更)に当たる場合、第6項の届出ができるのは同条第1項及び第3項の確認を受けた者に限られます。第3項の確認は施行規則で「医療機器等適合性確認」と呼ばれ、様式第63の19の5による申請書を厚生労働大臣に提出して受けます(施行規則第114条の45の9第1項)。変更計画の確認を受けただけでは届出ルートに乗らない場合がある点に注意してください。届出後、計画に従った変更と認められないときは、受理日から30日以内に限り、変更の中止その他必要な措置が命じられることがあります(同法第23条の2の10の2第7項)。
届出で代替できない確認済み変更は一変申請が必要ですが、この場合、品質、有効性及び安全性に関する調査に代えて変更計画に従った変更であるかどうかについての書面による調査又は実地の調査を行うことができます(同法第23条の2の10の2第8項)。申請自体は残るものの、審査の中身が計画適合性の確認に置き換わりうる構造です。
判断を誤ったときのリスクと、QMS内部の変更管理との役割分担
判断を誤った場合の帰結は、一変申請を届出で済ませた場合と、軽微変更届を出さなかった場合で異なります。前者は販売等の禁止と重い罰則、後者は罰金の対象です。
一変申請が必要な変更を届出で済ませた場合
薬機法第65条第2号は、第23条の2の5若しくは第23条の2の17の承認を受けた医療機器又は第23条の2の23の認証を受けた医療機器であってその性状、品質又は性能がその承認又は認証の内容と異なるものの販売・貸与・授与、これらの目的での製造・輸入・貯蔵・陳列、医療機器プログラムの電気通信回線を通じた提供を禁止しています。同号には括弧書きがあり、軽微変更届(第23条の2の5第14項。第23条の2の17第5項において準用する場合を含む。)又は認証品目の軽微変更届(第23条の2の23第8項)の規定に違反していないものは除かれます。一変申請が必要な変更を届出で処理すると、承認内容と異なる製品が流通する状態になり、この除外に入らない可能性があります。
罰則は、第23条の2の5第13項の規定に違反したときは3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金(併科あり)です(同法第84条第5号)。認証品目の第23条の2の23第7項違反も同じ罰則です(同条第6号)。
軽微変更届を提出しなかった場合
軽微変更届の未提出は、薬機法第87条第5号により50万円以下の罰金の対象です。認証品目の軽微変更届(第23条の2の23第8項)違反は同条第8号、届出品目の届出・変更届(第23条の2の12第1項・第2項)違反は同条第6号です。変更を実施した日から30日という短い期限のため、変更実施日を起点にした期限管理が必要です。
QMS内部の変更管理と薬事手続は別レイヤーです
ここが実務で最も混同されるところです。QMS省令に基づく設計変更の管理・変更管理プロセスと、薬機法に基づく一変申請・軽微変更届は、目的も相手も違う別のレイヤーです。 QMS内部の変更管理は、変更の識別・影響評価・妥当性確認・承認・記録を自社の手順として回すもので、相手は自社の品質管理監督システムです。薬事手続は、承認書(認証書)の記載事項と実際の製品を一致させるために行政又は登録認証機関へ出すものです。そして両者は独立ではありません。一変か軽微かの判断根拠は、QMS側で残した影響評価と検証・評価の記録そのものです。 変更のトレーサビリティが取れていなければ、なぜ軽微と判断したのかを当局や登録認証機関に示せません。QMS内部の設計変更プロセスは医療機器の設計変更とは?、変更管理の仕組みそのものは変更管理の基礎と実践で扱っています。本記事はその出口にある薬事手続に絞っています。
変更案件を起票したときのチェックリスト
- [ ] 変更内容を「どの申請書欄の記載がどう変わるか」の粒度で特定した
- [ ] 使用目的又は効果の追加・変更・削除を伴わないことを確認した(施行規則第114条の25第1項第1号)
- [ ] 病原因子の不活化又は除去方法に関する変更を伴わないことを確認した(同項第2号)
- [ ] 既存リスクの増大・新規リスクの発生、影響の推定可能性、製品の同一性の3点を評価し、記録に残した(同項第3号、薬生機審発0731第5号 記1)
- [ ] 変更後も承認(認証)された性能及び安全性に関する規格の範囲内に収まることを試験・評価データで確認した
- [ ] 原材料の変更を含む場合、医薬機審発0130第1号の対象原材料か、軽微変更届で扱えない5類型に当たらないかを確認した
- [ ] 対象原材料が限定カテゴリー(植込み部分・長期的接触・生物由来・生分解性・機能性被覆材)に当たらないかを、質疑応答集の考え方に照らして確認した
- [ ] 自社品目の区分(承認/認証/届出)に対応する様式と提出先を確認した
- [ ] 3類型に当たらないと確認できた変更について、通知が「一変申請及び軽微変更届のいずれも必要でない」とする範囲に当たるかを、事例名ではなく各通知の柱書の限定に照らして確認した
- [ ] 判断が分かれる変更について、PMDAの事前確認簡易相談または登録認証機関への相談の要否を決めた
- [ ] 変更実施日を確定し、軽微変更届の提出期限(変更後30日以内)を管理台帳に登録した
- [ ] 影響評価・検証結果・承認記録を、変更案件と紐づけて取り出せる形で保管した
よくある質問
軽微変更届はいつまでに提出すればよいですか?
軽微な変更をした後30日以内です(施行規則第114条の26第2項)。様式第63の10による届書を正副2通提出します(同条第1項。機構に医療機器等審査等を行わせる場合は提出先を「機構」と読み替えます)。認証品目は施行規則第118条の準用・読み替えにより、様式第66を当該登録認証機関に提出します。
一変申請と軽微変更届のどちらか判断がつかないときはどうすればよいですか?
まず施行規則第114条の25第1項の3類型に当たるかを判定します。第3号の判断は、薬生機審発0731第5号 記1が示す3つの物差し(既存リスクの増大・新規リスク/影響の推定可能性/製品の同一性)で評価します。通知はこの3点を「含まれ」るものとして挙げており網羅列挙ではないため、3点のいずれにも当たらないことだけを理由に軽微と断定することはできません。それでも判断が分かれる範囲は同通知の別紙2が事前確認カテゴリーとして示しており、承認品目はPMDAの簡易相談、認証品目は届出提出予定の登録認証機関に相談してから軽微変更届を提出する運用が示されています。
認証品目でも軽微変更届でよいのですか?
はい。認証を受けた事項の一部変更は登録認証機関の認証が必要ですが(薬機法第23条の2の23第7項)、軽微な変更は同条第8項の届出で足ります。軽微な変更の範囲は承認品目と同じ施行規則第114条の25が準用されます(第118条第1項)。異なるのは様式(様式第65/様式第66)と、提出先が厚生労働大臣ではなく当該登録認証機関である点です。
一般医療機器(届出品目)の変更手続きはどうなりますか?
一変申請・軽微変更届の枠組みではありません。届け出た事項を変更したときは、30日以内に届け出ます(薬機法第23条の2の12第2項)。提出先は、薬機法第23条の2の13第1項及び施行令第37条の38により、専ら動物用のものを除く届出品目については機構(PMDA)となり、届書は様式第40を正副2通提出します(施行規則第114条の47第2項・第4項)。自社品目の区分の判定は医療機器の認証・承認・届出の違いとクラス分類の判定で確認できます。
一変申請をすると、QMS適合性調査も必ず受け直しになりますか?
いいえ。変更が当該品目の製造管理又は品質管理の方法に影響を与えないものであれば、適合性調査の規定は適用されません(施行令第37条の25第1項、施行規則第114条の31)。認証品目には施行令第40条の4第1項に同旨の特例があります。調査が必要な場合の申請は様式第63の11(認証品目は様式第67)です。ただし製造所を追加する場合は別に確認が必要です。基準適合証があることで調査を要しないための要件は、当該品目が基準適合証と同一の区分に属し、かつその品目を製造する全ての製造所が当該基準適合証に係る製造所であることであり(薬機法第23条の2の5第7項第1号・第2号)、基準適合証の範囲外の製造所が加わればこの第2号の要件を満たさなくなります。同項第2号は「滅菌その他の厚生労働省令で定めるもののみをする」製造所を除いており、その製造工程は滅菌、最終製品の保管、その他厚生労働大臣が適当と認める製造工程です(施行規則第114条の32)。なおこの除外は第6項の調査の要否判定で数えないという意味であり、追加した滅菌製造所自体が調査の対象外になるわけではありません。基準適合証の記載製造所と同一でない滅菌・保管の製造所については、過去5年以内にその製造所が記載された基準適合証と調査結果証明書等がなければ、法第23条の2の5第8項の調査(追加的調査)が行われます(施行規則第114条の33第1項第5号)。
軽微変更届を出し忘れた場合、どうなりますか?
薬機法第87条第5号により50万円以下の罰金の対象です。加えて同法第65条第2号は、承認又は認証の内容と異なる性状・品質・性能の医療機器の販売等を禁止しており、同号の括弧書きは第23条の2の5第14項(第23条の2の17第5項において準用する場合を含む。)又は第23条の2の23第8項の規定に違反していないものを除くとしています。届出義務の履行は、この禁止規定との関係でも意味を持ちます。
変更計画の確認(IDATEN)を受けていれば、変更後の届出でよいのですか?
逆です。確認済みの変更計画に従った変更は、変更を行う日の30日前までに届け出ます(薬機法第23条の2の10の2第6項、施行規則第114条の45の13)。また、届出で一変承認が不要になるのは同項が「製造方法の変更その他の厚生労働省令で定める変更に限る」と限定した範囲(施行規則第114条の45の12)であり、それ以外の確認済み変更は一変申請が必要です。ただしその場合、品質、有効性及び安全性に関する調査に代えて、変更計画に従った変更かどうかについての書面による調査又は実地の調査を行うことができます(同法第23条の2の10の2第8項)。対象は承認品目のみです。
まとめ
- 手続は一変申請・軽微変更届・いずれも要さないの3通りありますが、入口は1つです。判断の向きは一変該当性からで、施行規則第114条の25第1項は一変申請が必要な変更を列挙し、それ以外を軽微な変更とするネガティブリスト構造になっています
- 第3号の判断は、薬生機審発0731第5号 記1が示す3つの物差し(既存リスクの増大・新規リスク/影響の推定可能性/製品の同一性)で行います。通知は3点を「含まれ」るものとして挙げており網羅列挙ではないため、3点のいずれにも当たらないことだけを理由に軽微とは断定できません。「明らかに軽微とは言えない」ものは一変側です
- 3類型に当たらないと確認できた変更には、通知が「一変申請及び軽微変更届のいずれも必要でない」とする範囲があります(旧一変軽変通知 別紙2、薬生機審発1020第1号 別添 記2、医薬機審発0423第1号 別添 記2)。この範囲は3類型に当たらないと確認できた変更から通知が切り出したものであり、事例名の一致ではなく各通知の柱書の限定に当たるかで判定します。1020第1号・0423第1号の範囲では、次の一変申請時に記載整備を要します
- 事例リストは通知ごとに役割が違います。薬生機審発0731第5号の別紙1は軽微変更届の対象事例、同通知の別紙2は事前確認を受けてから軽微変更届を提出する範囲です。いずれも例示にとどまり、同じ変更内容でも一般的名称が異なれば取扱いが変わりうるとされています。これに対し旧一変軽変通知の別紙2は「一変申請及び軽微変更届が必要でない範囲」を示したもので、上記の第3のルートの原型です
- 様式と提出先は区分で変わります(承認品目=様式第63の9/第63の10、認証品目=様式第65/第66、届出品目=様式第40)。軽微変更届は変更後30日以内、変更計画確認に基づく届出は変更予定日の30日前までと向きが逆です
- 製造所の追加・変更は、旧一変軽変通知 別紙1 の「6.製造方法欄」「7.製造販売する品目の製造所欄」ではなく、平成26年11月19日付け薬食機参発1119第7号・薬食監麻発1119第12号の工程別の条件(設計/主たる組立て/滅菌/最終製品の保管/品質管理監督システムに変更がない場合の特例)で判定します。この2欄は同通知の記7(3)により置き換えられています
- プログラム医療機器の本体の変更(アルゴリズムや判定性能)は、薬生機審発1020第1号が挙げる周辺事項の事例では判定できません。承認書の「使用目的又は効果欄」「形状、構造及び原理欄」「性能及び安全性に関する規格欄」などに記載された事項が変わるか、その変更が有効性・安全性に影響するかで判定し、条文上は第114条の25第1項第3号(記1の(1)(2))で評価します
- 原材料の変更は令和8年1月30日付け医薬機審発0130第1号が現行の取扱いで、旧通知と旧Q&Aは廃止され、同日付けで新しい質疑応答集(事務連絡)が発出されています。低リスク限定原材料も記4の使用前例6条件を満たせば対象化できます。軽微変更届には自己宣言書の添付と備考欄への記載が必要です
一変か軽微かの判断は、最終的に「変更の影響をどう評価し、何を根拠に軽微と言えるのか」を説明できるかに帰着します。設計変更の起票から影響評価・検証・承認までの記録が変更案件ごとに紐づいて残っていれば、軽微変更届の自己宣言書も一変申請の添付資料も、その記録から組み立てられます。変更管理の記録を電子化しておくと、届出のたびに根拠資料を集め直す作業がなくなり、複数品目の変更が並行しても同じ運用のまま説明責任を果たせます。
関連記事